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工藤夫婦の堕落【序章】

【序章】



全フロアの掃除と電球の付け替え作業を全て終えた工藤翔太は、今日も定時の十五分前に退社した。妻が「職場」から帰ってくる前に、早く部屋の準備をしなければいけない。今日も午後五時すぎの列車に駆け込み、ようやく一息をつく。まだマンションに着くまでは三十分以上も時間があるというのに、彼はもう陰茎が甘く勃起して、スラックスの下で貞操帯に締め付けられているのを感じていた。




倉田様のお帰りが待ち遠しくてたまらない。今夜の『調教』を想像すると、アルミ製の無機質な檻に収まっている小さな陰茎が熱くしこって、先端からは早くも粘ついた汁がにじんでしまう。


「ご主人様に比べると本当に粗末なチンポね。こんなのをホンモノのペニスだと思って毎日しゃぶってたなんて、私・・・馬鹿みたい」


初めて貞操帯をつけてくれた彼の妻が、心底軽蔑した目で吐き捨ててくれた台詞が脳裏によぎった。同時に亀頭がビクリと大きく反応し、貞操帯の先端にキスをしたのを感じる。彼は向かいに座っている主婦にばれないよう、スラックスのポケットに手を突っ込むふりをして、ポジションを調節した。貞操帯のやや上、陰毛が情けなく全て剃り落とされた下腹部がやや熱を持っているように感じるのは、妻のすすめで先日入れたばかりのタトゥーのせいだった。


『オナニー専用』。


それが、彼の皮かむりの上に描かれたタトゥーの文字だった。正確にその形状を描写すれば、まるで女子高生のような丸文字で書かれた「オナニー専用」の文字の下には陰茎に向けてまっすぐに赤い矢印が引かれていたし、末尾には(笑)の文字が冗談のように付け加えられて、タトゥー全体の被虐性を増していた。彼の役立たずのムスコにむけて強調するような赤い矢印を入れたのはもちろん倉田のアイディアで、「語尾に『笑』をつけた方がもっと情けなくて翔太さんらしいわ」と提案したのは彼の妻……今は「奥様」と呼ぶことを義務付けられている、工藤咲(さ)輝(き)だった。一生取れることがない刻印、奴隷の証。それを想像するだけで、小さな怒張がぴくぴくと反応する。


(はやく、ご主人様にオナニーの許可を頂かなくちゃ)


息が荒くなったのを回りに気取られやしないかと、彼は密かに周囲を見渡した。前回情けないオナニーを御主人様と奥様の前でご披露してから、もう五日も射精をしていない。御主人様に頂く「お薬」は最高の快楽を与えてくれるが、その代償として、日常生活が困難なほどの強烈な性欲ももたらすのだった。


早く薬が欲しい。


おチンポとキンタマにいつもの「お注射」をしてもらって、正座をして奥様と御主人様の荒々しいセックスを見ながら、陰茎に手を触れずに「ドピュドピュッ」とみじめな射精をしたい。


お薬のおかげでずっとずっと量も増え、濃くなった精液。ベッドの上の奥様に触れることもなく、床にまきちらされたそれを自分の舌で必死に掃除しながら、その情けなさをバカにされ、ご褒美のピンクのリボンをチンポの竿に結んでもらって、またあのセーラー服を着て恥ずかしい記念撮影をして、写真をツイッターで世界中に拡散していただいて・・・


窓から夕日が差し込む車両の中で、彼は脳裏に去来する異常な妄想にすっかり酔いしれていた。


妻を「奥様」と呼ぶようになってもう数ヶ月がたつ。こうして帰りの列車に揺られていると、彼は自分たち夫婦が「咲希」「翔太さん」と呼び合っていたころのことを思い出すこともあった。一瞬甘美な思い出のように感ずるときもあるが、正直今の彼にとっては恥ずかしく、むしろ思い出すのも嫌な記憶といえた。早漏であることを懸命に隠し、自分のテクニックが妻の体を満足させられていると自惚れていたあの頃。自分にふさわしい身分も知らずにいた日々は、もはや苦痛でしかない。今の彼にとっては、こうして閑散とした列車に揺られながら、今夜の「儀式」を想像しては下半身を熱くすることだけが最高の幸せなのだった。


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