美優 ~転落アイドルAVデビュー~

 「僕の彼女はアイドルをしてます」


 そんなふうに紹介すると誰もが「嘘をつけ」という顔をするだろうが、本当なのだからしかたがない。日下部美優(くさかべ みゆ)が芸能事務所に所属してアイドル活動をしているのは本当だし、僕が彼女と付き合っているのも決して嘘じゃない。僕と彼女は小学校からの幼なじみで、高校の卒業式で彼女に告白されて僕らは彼氏彼女の関係になった。そこまでは本当だ。



 まあ種明かしをしてしまえば、美優は誰もが顔や名前を知っているような有名アイドルではないのだった。正直「アイドルの卵」とか「草の根アイドル」みたいな表現をしたほうが適切なのかもしれない。彼女が所属している「ツインテール」というアイドルユニットは、例えば学園祭の後夜祭の前座や、せいぜい秋葉原で新しいゲームが発売するときの賑やかしといった程度の仕事をしていて、普通の人たちが「アイドル」と聞いて想像するような、デビューしたとたんに大舞台に呼ばれるような、CDを出せば飛ぶように売れるような、そんなとんでもない存在ではないのだった。僕にとって美優は大切な恋人、それ以上でも以下でもないのだ。


 「ツインテール」は、学校の制服を模したらしい臙脂色のチェックスカートに可愛らしいデザインのネクタイがチャームポイントの、いわゆる学園系アイドルグループだ。まあよくある話で、メンバーは全員ユニット名のとおり、髪をツインテールに結っているのが売りである。彼女らの衣装は、僕にはどう見てもAKBの劣化コピーのようにしか見えなかったが、それでも彼女らにはコアなファンがそこそこ付いていたし、ある一定の人気は博していたようだった。全員が十代半ばだったデビュー時はともかく、ここのところ微妙な仕事しかもらえない落ち目なアイドルグループではあったが、それでも美優は「どんな仕事もチャンスの入り口なんだよ」と、国民的アイドルグループのプロデューサーが言ったといううさんくさい格言を自分に言い聞かせて、彼女なりに一生懸命、活動を続けていた。


 特段自慢をするつもりはないが、小柄で幼く可愛らしい顔立ちの美優は「ツインテール」の中でもいちばん人気があり、歌もダンスも専門スクールに通って人一倍頑張っていた。いつか有名アイドルになりたい、という美優の夢を僕は荒唐無稽だと思わなかったし、むしろいつかそれが実現して彼女が僕のもとを去ってしまうのではないか、と心のどこかで怖がってもいた。

 家が近所で幼なじみだった僕らが付き合っていることは、親しい友人にも事務所にも、完璧に秘密にしている。アイドルに彼氏がいてはいけない(ことになっている)のは、いつの世も常識である。友人と一緒にいるときはできるだけ会話を交わさないようにしていたし、デートのときは、もちろんサングラスや帽子で変装することにしていた。まだアイドルの卵とはいえ、今はツイッターやソーシャルサイトですぐに噂が広まる時代だ。用心するに越したことはなかった。


                  * * *


 最近、美優は学校やダンススクールの学費がかさみ、かなり深刻に悩んでいるようだった。彼女の実家は商店をやっていたが、あまり裕福なほうではなかったし、彼女がアイドル活動でもらえる報酬は事務所に中抜きされて、本当に雀の涙程度である。僕は何度か金銭的援助を申し出たことがあるが、彼女は「いいの、ハルくんは何にも心配しないで。今度のオーディションに受かれば、全部うまくいくんだから」と笑うだけだった。

 彼女に何度も訪れる「今度のオーディション」は、それぞれが芸能界の一大登竜門であり、確かにそれに受かれば人生ががらっと変わるようなものだったが、募集人数数名に対して数千人が応募するような狭き門であることもまた確かだった。彼女ははじめ、大きなオーディションばかり選んで挑戦していたようだったが、登録費という名目で主催者側に搾取される金額も次第にばかにならなくなってきたらしく、最近はもっと規模の小さいオーディションにも積極的に応募するようになっていた。ときには首尾よく受かってTVに映れることもあったが、ふたを開けてみれば、深夜番組のスタジオでひな壇に並び、芸人の言葉にいちいち大げさに笑ったり拍手をしたりする程度の仕事だったりして、なかなか彼女は「チャンスの入り口」にたどり着けないでいるようだった。落胆する僕に、美優は喜んでいるんだかがっかりしているんだかよくわからない顔で、「まあ、これも修行だよ。これがきっかけで次のお仕事が来るかもしれないし」と苦笑いしていた。


 僕が心配だったのはそれだけではない。彼女の事務所の40代のプロデューサーが、ここ数ヶ月、しつこく彼女にアプローチを掛けているのだ。その男はこれまで2度の離婚歴があり、しかもその元妻はいずれも自分の事務所の元タレントだったというくせ者だった。「商品に手を出さない」というのが芸能界のルールだと思っていたが、その男は2回もそれを破っていることになる。さすがに二回りも年上を相手に美優が浮気をするとも考えられず、僕はその意味では安心していたが、一方で「今日は肩に手を回された」とか「お尻を触られた」とかいう話を美優にされるたびに、いますぐ事務所に行ってその男をぶん殴ってやりたい気持ちに駆られた。事務所のHPで男の顔写真を見たが、いかにも好色で下品そうな顔つきの太った中年で、僕は強い嫌悪感を覚えた。




 「あの人、ほんとにタチ悪いんだよね。あの人のセクハラで事務所やめた子も結構いるって聴くしさ。すっごいデブでヒゲもぼーぼーで、ご飯食べる時もくちゃくちゃ音立てるし。ほんと気持ち悪い人だよ」


 「えっあたし?あたしは大丈夫だよぉ、ハルくんがいるのに浮気なんてしないし、セクハラされたときも一回みんながいるとこで『やめてください!』って大声だしたことあるから、もう全然平気だよ」


 美優はそう言ってくれたが、彼女の携帯には事実、毎日のようにしつこい誘いのメールが届いていた。中には「俺と付き合ってくれたらすごい見返りがあるんだけどな」というような取引じみたメールもあるといい、僕は美優に別の事務所に移ることも提案したが、契約の関係でそれは現実的ではないのだそうだ。


 プロデューサーのセクハラ問題に加え、事務所が美優のためにピンで取ってくる仕事が次第にきわどい方向にシフトしていっていることも、彼女を悩ませる問題のひとつだった。

 「あのね、事務所からちょっとアレな仕事の依頼が来たんだ。こないだの深夜枠のアイドル番組なんだけど、今回は水着なんだって。しかも普通のじゃなくて、結構きわどいデザインのやつ。それで牛乳が入った水鉄砲掛けられたりするんだって。あたし絶対やりたくないんだけど、事務所は前向きみたいでさ・・・」

 そう美優に相談されて、僕はさすがに言葉に詰まった。正直「このあたりであきらめたらどうか」と提案したい気持ちはやまやまだったのだが、事務所にはダンススクールやボイストレーニングにかかる費用の一部をずっと負担してもらっているらしく、ここで勝手に契約を打ち切ってしまうと大きな負債が残るだけだという。「次のオーディションに受かれば」の繰り返しは、まるで「次は勝つから大丈夫」と言って借金を繰り返すギャンブラーに似た行為だと、僕は遅ればせながら気付いたのだった。

 「やばいね、そろそろなんとかしないとね...」

 このところ、美優は口癖のようにそう言っていた。仕事があるようには見えないのに、事務所に拘束される時間はどんどん増え、デートもほとんど出来ない日々が続いている。一方の僕も就職活動の時期に突入し、美優との関係は次第にぎくしゃくしたものになっていった。



 たまにデートができても、美優は心ここにあらずといった調子だった。なぜかいつも携帯電話を気にしていて、例えば喫茶店にいる最中でも、事務所かららしい着信があるとあわてて店の外に出て行ってしまう。ガラスの向こうでしばらく話をして戻ってきたかと思えば、

「ごめんねハルくん、また急な呼び出しが入っちゃった。今度はぜったい埋め合わせするから」

 などと言い残して、逃げるように去っていく。普通のカップルならここで浮気でも疑うところだが、彼女のいまの状況では、そんなことをしている余裕もないように思えた。僕は心底彼女のことを心配し、内定さえ出たら僕が事務所に負債を払い、アイドルの夢をあきらめさせようと決心していた。

 僕はまた高校生のころのように、美優と穏やかなデートがしたかった。サングラスも帽子もせずに、どこにでもいる当たり前のカップルとして。


 しかし、その願いが叶うことはなかった。彼女がブレイクすることはその後もなく、さらに追い打ちを掛けるようにして父親が事業に失敗し、彼女の家は多額の借金を抱えることになった。彼女が事務所に呼び出されることは以前にも増して多くなり、次第に僕との距離は離れていった。

 互いにはっきりと別れを確認したわけではないが、デートの約束を何回か反故にされてからは連絡が途切れがちになり、僕らの関係はほぼ自然消滅したような格好だった。そのうち美優は大学にも姿を現さなくなり、僕は友人らに彼女の行方を何度か尋ねられたが、答えることはできなかった。

 そのときから、僕はもう彼女がどういった事情に巻き込まれているのか、もうおおよその想像がついていた。借金や契約に縛られ、アイドルの夢をあきらめた女の子たちが、どういったことをしてそのアフターフォローをしているのか。若く可愛らしい彼女らには、いくらでもそのツテがあるのだ。需要があり、供給があれば、起きる現象はひとつである。僕はなんとか彼女に連絡を取って、「僕がなんとかする」と伝えてやりたかった。汚い大人のルールに従って、夢と心中することなんてないのだ。しかし、美優の携帯はいつの間にか番号が変更されており、何度メールをしても、返信が返ってくることはなかった。

 彼女はいまごろどうしているのだろう? 正直に言えば、美優の家を直接訪ねることや、彼女の事務所に問い合わせるなど、ほかにいくらでも彼女と連絡を取る手段はあったのだと今になって思う。しかし、当時の僕はなぜか、どうしてもそうすることができなかった。もしもそうして彼女に会えたとしても、結局僕にできることなんて何もないのだ。「ボクガナントカスル」ことなんて、どうせできないことを僕は心のどこかで分かっていた。僕は彼女に手をさしのべるポーズだけは取っても、実際に人生を捧げて彼女を救う気なんてなかったのかもしれない。そういう意味では、僕はあのプロデューサーと同レベルの最低な男と言えた。





 それから数週間たったある休日の午後、美優が脂ぎった中年男と腕をからめて繁華街を歩いているところを目撃してしまったとき、あの「最悪の想像」はほぼ裏付けられたと言ってよかった。髪をほどき、サングラスもしていた美優は別人にも見えたが、彼女の変装姿を間近でずっと見てきた僕には、それが美優であることがすぐにわかった。そして、彼女が頭を預けて甘えているその男は、彼女が毛虫のように嫌っていたはずの事務所のプロデューサーに違いなかった。背が小さい美優はでっぷりと太った彼とまるで不釣り合いで、周囲には援助交際カップルのようにしか見えなかったと思う。男は美優の腰に気安く手を回し、短いスカートの上から彼女の尻をいやらしい手つきでなで回しながら、「どうだ、おれの女は」と言わんばかりに街を闊歩している。プロデューサーの趣味を強要されているのだろうか、美優は以前なら絶対に身に付けないような露出度の高い服装をし、細くて綺麗な脚を周囲に見せびらかすようにして歩いていた。



 僕から離れていった美優は、結局彼の助けにすがったのだろう。就職した僕に負担をかけるよりは、あの男に好きに利用されるほうを選んだということだ。もうはっきり言ってしまえば、彼女はプロデューサーの求めに応じて、彼の愛人にさせられていたのだと思う。事務所がこれまで出してきた経費を、美優はいま、自分の体で返しているのだ。親の援助にも頼れない彼女は、あの男の言うなりに応じるしかなかったのに違いない。もしかしたら、あの男は彼女の父親のことも利用したのかもしれない。借金の一部を肩代わりする代わりに性的な奉仕を強要するとか・・・まあ、もう想像しても仕方のないことだったが。



 彼女は僕に「愛してるよ」と言ったその唇で、あの太った男の陰茎をくわえこみ、白濁した液体をたっぷり射精されたのだろう。男の言うとおりのいやらしい格好をし、男の言うなりに下品なチンポ奉仕をさせられる性欲処理アイドルに堕ちたのだ。そう思うと、僕は胸がぎゅっと痛むように感じ、強烈な吐き気に襲われた。道路を挟んだ反対側で、男は美優の耳に口をつけるようにして何事か囁き、美優は尻を触られながら、ぎこちない笑顔を返している。男はきょろきょろと回りを見渡してタクシーを止めると、美優とともに乗り込んで、いずこかへ走り去った。きっとこれからラブホテルにでも連れ込んで、彼女の体を楽しむ気なのだろう。数ヶ月前、僕の誕生日にデートをしていたときも、美優が「事務所」に電話で呼び出されたことを思い出し、今更ながらに「あのとき、彼女は僕よりもあの太った男に奉仕することを選んだのだ」という事実を突き付けられて、僕はさらに陰鬱な気分に陥った。



                    * * *


 美優が出演しているアダルトビデオがあるという噂が大学で流れたのは、それから1カ月ほどしたころだ。


「やべーよ、美優ちゃんガチでAVデビューだよ!もうネットでサンプル動画が見れてよ、ありゃ間違いなく美優ちゃんだったわ。マジで買いだよ、買い」

「お前、ほんとに美優ちゃんと付き合ってなかったの?俺はてっきり裏で付き合ってると思ってたんだけどなあ。もったいねえ、あんな綺麗な体めちゃくちゃにできるなら俺、捕まってもいいね」


サークルの飲み会。ビールを片手に興奮した様子でそう報告する友人たちを前に、ぼくは生返事を返すしかなかった。美優とはあれから一度も連絡を取っておらず、行方知れずのままだ。AVに出なくては返済できないほどアイドル活動というのは金がかかるのか、と僕はいぶかしんだが、何のことはない、彼女は父親の借金をも肩代わりさせられているのに違いなかった。どうせあのプロデューサーの手引きなんだろう。

「いやー、アイドルから一気にAV女優とは怒濤の転落劇だなぁ。たしか美優ちゃん、前はカルピスかなんかのCMに一瞬映ったりしてなかったっけ? デビューのときは結構良かったらしいけどな~、女子大生になってアイドルってもうきついんかねぇ?」

「でもすっげえエッチな体してたわ、フェラも結構年季入っててよ、ひひっ!ありゃ絶対枕営業向きだと思ったね!」

 上機嫌でビールを煽る友人は、彼女のデビュー作が大勢の男優を相手に、2時間近くにわたってフェラチオと生中だしをひたすら繰り返す作品であることを僕に教えてくれた。しかも、その衣装は彼女が所属していた「ツインテール」のものであるらしい。

「いやー、サンプル動画で10回以上抜けるねアレは。美優ちゃんもちゃんとツインテールにしててさ、衣装もいいけど履いてるブーツもエロいんだよな~!」

「俺もファンだったからきついわ~、なんていうのコレ、寝取られた感っていうのかねぇ?もう発売されてるからお前も買って帰ったら?ははははっ!」

 無神経な友人に怒る気にもなれず、僕は早々と居酒屋を後にした。駅に続く繁華街を歩いていて、この場所で美優が男と歩いているのを目撃してしまったことを思い出す。軽い不快感を覚えながら、僕は駅へ向かう道からきびすを返し、裏路地へと入っていった。この先にアダルトDVDを扱うショップがあったことを覚えていたからだ。

 ピンク色ののれんをくぐると、センサーが人を感知して「いらっしゃいませ」と数回繰り返した。店内には猥雑な商品が所狭しと並んでいて、僕はその中をひとつひとつ物色していく。目当ての品は、思ったよりもずっと大きな扱いで陳列されていた。


「元アイドルが衝撃AVデビュー!下品なお掃除フェラは絶品!」

「男優29人を連続切り、ロリボディに生中出し21連発!」


僕はそんなポップを目に入れないようにしながら、パッケージをレジへと持って行った。
美優はもう僕のものではないということを、再確認するために。 

           * * *

「・・・こ、こんにちはー」
「「「こんにちはー!」」」
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくねー!」「ミユたん可愛い~!」「ピーピー!」

僕のアパートの小さめのテレビに、美優の姿が浮かび上がった。既に深夜2時を過ぎていたが、全く眠気を感じない。久しぶりに見る美優は、以前と何も変わらないように見えた。赤いリボンでいつものツインテールに結んだつややかな髪、細くスレンダーな体型。服装も、見慣れたいつもの衣装だ。紺色のブレザーに臙脂色のチェックスカート、可愛いネクタイに女子高生がよく履いている革ローファー。レプリカでもなんでもなく、それが本物の彼女のステージ衣装であることが、僕にはすぐに分かった。

調度品がなにもなく、コンクリートが打ちっぱなしのがらんとした大部屋の中央に、彼女は立っている。異様なのは、彼女の周囲にひしめくように座っている半裸の男たちだった。それぞれがパンツ一枚の姿なのになぜか靴を履いており、早くもパンツに手を突っ込んでもぞもぞといじっている男すらいる。ほとんどが異様に太っているか、無様にはげているか、またはがりがりの異様な風体。美優を取り囲んでいるのは、一目でふだんの生活に女っ気がないことが見て取れる、そんな素人男優たちだった。
 美優は男優たちに囲まれて、自己紹介をしている。まるで彼女が昔出ていたステージのように、彼女がひとことひとことを発するたびに男たちの合いの手が入った。彼女が絶対に言わないような卑わいな台詞だらけで、彼女の引きつった笑顔からも、台本通りに言わされているのが見え見えだった。

「今回はじめてAVに挑戦することになりました、元アイドル『ツインテール』のミユでーす」

「おお~!」「ひゅーひゅー!」

「今日は29人の男優さんたちにお相手してもらえることになりました。ミユのためにザーメン一杯貯めてきてもらえて、とっても嬉しいです!」

「一週間貯めてきたよ-!」「いっぱいミユたんに中出しするからね~!」

「中だししたあとは必ずミユのおくちにおチ○ポ持って来てくださいね。みんなのぐちょぐちょになったおチ○ポ、ミユのお下品なお掃除フェラで一本ずつ綺麗きれいしまーす」

「ヒャッホー!」「するするー!」「ミユたん最高~!!」

アイドル時代とは似ても似つかない、「ファン」との交流が続いた。男たちのねちっこい視線にさらされながら、美優はスリーサイズから初体験の年齢、週に何回オナニーをするかまで、卑猥な質問にひとつひとつ答えている。


「さーみなさん、今日はミユたんからサプライズがあるらしいよ~!」

一通り質問タイムが終わると、スタッフらしい若い男がそう男優たちを煽った。どよめく男たちの前で、美優はそばのパイプいすに座り込み、ミニスカートを持ち上げるようにして少しずつ脚を開いていく。

「実は今日はぁ、みんなのためにノーパンで撮影所まで歩いてきましたぁ」
「「「おお~!!」」」

(・・・やめてくれ!もう見たくない!)

そう思ったが、リモコンを握りしめた手は言うことを聞いてくれない。美優がぱっくりと脚を開くと、男優たちの目が彼女の秘所へと注ぎ込まれた。僕の目にはモザイク越しにしか見えない彼女の大切なあそこを、脂ぎった無様な男たちは無修正で見えているのだと思うと、吐き気がした。こいつらは美優のおま○こを直接楽しめて、なんで僕はモザイク越しなんだ。そんな理不尽な気持ちにすらなった。


 美優は画面の中で、男たちにはやし立てられながらオナニーを始めた。きれいな指であそこを広げ、女日照りであろう男たちに、さながら性教育を施しているかのようだ。待ちきれなくなった半裸の男が二人飛び出すと、さっそく彼女の眼前にその汚い持ち物を晒す。彼女は一瞬躊躇ったようだったが、大きく口を広げてそのうちの一人の陰茎をほおばった。じゅっぶじゅっぶと卑わいな音が響き、男優たちがはやし立てる声がさらに高まる。もう一人の男は美優の可愛らしい手にぼってりと勃起したソレを握らせ、しこしこと手コキを楽しみ始めた。やがてフェラチオを受けている男は感極まったような声を上げて、美優の口のなかにたっぷりと射精を遂げた。彼女は突然吐き出された大量の精液に一瞬ビクっとした様子をみせたが、すぐに笑顔を浮かべて、ごくごくとそれを飲み下していく。舌をまわしながらじゅるじゅると音を立ててしばらくチンポをなめしゃぶると、彼女はぷはっ、という音を立てて口を離した。僕の前では絶対にしたことのない、卑猥なお掃除フェラ。あのプロデューサーが教え込んだのだろうか? さきほどまで汚いザーメンまみれであったろう男の陰茎は、美優の口の中ですっかり清められ、きれいな皮かむりに戻っていた。



 そして、ついに生中だしシーンが始まった。美優は近くに据えられた黒い革製ソファに座ると、すだれ状にはげ散らかした中年の男が舌なめずりをして覆い被さっていく。バーコード男は美優のブーツをはいた両足を左右に開くようにし、正常位でいきり立ったものをブチ込んだ。美優は嫌がる様子もなく、笑顔で男に「動いていいよ」「すっごく気持ちいいよ」と囁いている。30以上年が離れた2人は、まるで恋人のように交尾している。男は美優に抱き付いて、かくかくと腰を振り始めると、やがて身を震わせて射精した。美優は感じているのだろうか、それとも演技なのだろうか、親指を加えて声を出すのを我慢している様子だったが、男がチンポを引き抜くと、一瞬おいて大量の精液がソファの上にぶちまけられた。ごぽごぽと音をたてそうな勢いで、真っ白に濁った欲望が黒革の上にぼたぼたと落ちていく。脚をばっくりと開いたまま放心している美優の口に、バーコード男は約束どおりザーメンに汚れた持ち物をつきつけると、彼女はロボットのような自動的な動きで、そのややしおれたチンポにしゃぶりついた。



 美優が首をグラインドさせてじゅっぽじゅっぽとお掃除フェラを続ける中、もう次の男優が彼女に襲いかかっていく。美優の次のお相手は、100kgを超えていそうなでっぷりとした巨漢だった。デブ男は美優を強引に抱き寄せると、ぶちゅぶちゅとその可愛らしい唇に汚い口づけを迫る。美優はまったくためらう様子もなく、全裸の肥えた男の肩に手を回し、恋人のようにキスに応じてやっていた。デブ男の舌がレロレロと彼女の口内をかき回すのを、カメラは間近で撮影している。舌と舌のあいだにツーっと唾液の橋が渡り、デブ男は恍惚とした表情をみせた。


美優はソファに手を付いて、可愛らしいケツを男に向け、スカートをまくり上げた。彼女のミニスカートはすっかり男たちの白濁で汚された上、腰までまくりあげられて、衣装としての用を足さなくなっている。デブ男は黒いニーソックスにつつまれた彼女のやわらかい太ももを両手でつかむと、挿入しやすいように脚を開かせた。バーコードへの奉仕はまだ続いているのに、美優はデブ男のチンポのためにケツをややあげると、数秒後に合体した。デブ男はもしかすると童貞だったのかもしれず、「ミユたん、ミユたん」と繰り返しながら猛烈な勢いで腰を振った。

「ツインテールのCD全部10枚ずつ持ってるよぉ!」

「俺のこと覚えてる?お誕生日ライブも握手会も行ったんだよぉ!」
  
ぶひぶひと鼻息も荒く、そんなことを口走りながら美優のケツ肉に腰を打ち付けるデブ男。美優は「ありがとね、キミのこと大好きだよ」「あんあん、気持ちいい、すっごい上手だね」と励ますように腰をくねらせ、ザーメンを哀願していた。男はあっという間にザーメンを射精したようだったが、まだ腰を止める様子はない。バックで繋がったままソファに腰掛けて背面騎乗位のかたちに移行すると(これができるなら童貞ではないのかもしれない)、抜かずの2回戦に突入した。巨漢の上で踊る美優のスレンダーな体は、きっと男の3分の1の重さもないだろう。そばでしばらく観戦しながらパンツの中をいじっていた他の男優が2人、我慢ができなくなったのか、騎乗位で繋がったままの美優のそばに走り寄っていった。美優はパンパンと音を立てて挿入されながら、にこっと笑顔を見せて2人の小さな陰茎を交互にくわえてやっていた。その笑顔は、かつて彼女がステージでファンたちに見せていた表情そのもので、僕はなぜか強烈に興奮してしまった。


初めてみたお掃除フェラよりも、不細工な男たちに輪姦されるシーンよりも、その笑顔こそが最もエロティックだった。

 彼女は今もアイドルなのだ。

 いや、今こそ彼女がなりたくてなれなかった、本当のアイドルになれたのだ。

 僕はいつの間にか、自分の勃起した陰茎をこすり上げていた。美優の彼氏ではなく、ずっと片思いをしていたファンだったと自分に思い込ませ、画面の中の不細工な男優たちに思いを重ねて、彼女の体をザーメンで汚す。しかし、いくらこすり上げても射精のときは訪れない。画面に見入りながら、僕は無様な寝取られオナニーを重ねた。美優に片思いを続けるファンの一人として。凡人には一生手の届かないアイドルに恋い焦がれる取り巻きの一人として。


 そうだ、今度彼女の握手会にいこう。

 DVDを買って、サインもしてもらって、おしゃべりをして。

 そして、次回作にはきっと僕も出してもらおう。

 ぼくも、みんなのザーメンアイドル美優たんを心から応援する、みじめで無様なファンの一員になれたのだから。


【完】

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[ 2016/12/06 20:00 ] 【小説】短編シリーズ | TB(-) | CM(0)

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